全国各地の自転車関連の取り組みを広く発信・共有し、具体的な自転車まちづくりにつなげるための「自転車利用環境向上会議」。
2024年10月3・4日に福井県で行われた「第11回 自転車利用環境向上会議 in 敦賀・若狭」に参加しました。
本会議は2日間にかけて行われ、自転車活用を通して地域の価値を再認識したり理解を促進できる内容になっています。第11回の今回は過去最多の518名が参加しました。
1日目のプログラム
オープニングで福井県知事の杉本 達治さんからご挨拶があり、次にパネルトークが行われました。
パネルトーク
パネルトークでは、最初に「快適で安全な自転車利用に向けて」というテーマで敦賀市内の事故発生場所が紹介されました。
全国的平均と比べて福井県では「車優先」の認識が根付いてしまっているようですが、シェアサイクルの運用や、道路をリデザインして自転車通行空間創出をするなど、人にやさしいインフラの整備が進められているとのこと。
以前、HaNeRiのコラム「サイクルツーリズムとは?楽しみ方やメリット、自治体の取り組みなどを紹介」にて、自転車だと車で移動するよりも各エリアやスポットでの滞在時間が長くなるため消費金額が多くなる傾向があると述べましたが、実際に敦賀市で車利用者と比べて徒歩・自転車で移動する人の消費額が約1.5倍になったという結果が報告されました。
また、「アクティブモビリティ」の紹介もありました。アクティブモビリティは、自転車や徒歩など、自分の体力を使った移動のことです。ヨーロッパを中心に積極的に取り入れられており、環境への負荷低減はもちろん、特にシニア層の健康維持に役立っている、改めて注目されている移動手段です。
日本でもアクティブモビリティが広まれば、高齢者が自動車運転免許の返納に前向きになる可能性があるなど、参考になるお話が聞けました。
基調講演
続いては基調講演。登壇者は中華大學 観光学院長の張 馨文さんで、テーマは「サイクルツーリズムを通じた地方活性化」です。
自転車利用に関する国際会議「Velo-city」をアジアとして初めて台北に招致したエピソードや、台湾やその他におけるサイクルツーリズムの様子を知ることができ、海外の自転車への取り組みに関して理解が深まりました。
また、張教授が携わられた、サイクリングを通じた日本人女性と台湾人少女の交流を描いた作品「南風(なんぷう)」の映画予告編も流されました。
海外で現地の人と一緒に魅力あふれるスポットをサイクリングしている主人公の姿がとても楽しそうでした。映像に登場する開放的な道や登場人物の交流を見て、台湾でサイクリングしたい気持ちが高まりました。
パネルディスカッション
続いては「自転車観光による地域創生 ―福井・わかさいくるの取り組みから見える展望―」がテーマのパネルディスカッション。
福井県では、2024年3月の北陸新幹線の福井・敦賀開業や2025年大阪・関西万博開催を誘客のチャンスと捉え、敦賀駅から若狭高浜駅を結ぶ「若狭湾サイクリングルート」を整備して、ナショナルサイクルルートの指定を目指しているそうです。
下記をはじめ、サイクルツーリズム推進に向けた取り組みが行われています。
・サイクリングガイド養成講座
・国内、外国人モニターツアー
・「サイクリストに優しい宿」の認定、整備支援
・ルートが通る全6市町におけるシェアアサイクルまたはレンタサイクルの設置
また、「福井県自転車アンバサダー」として、福井県出身の元プロロードレーサーの中島康晴さんが県外のイベントや学校などでサイクリングコースや町自体の魅力を発信されています。
パネラーのおひとりである福井工業大学の吉村朋矩教授からは、県民調査にて、自転車利用環境が改善された場合に自転車の利用頻度、新規利用、車利用からの切り替えの意向が増える結果になっているとお話がありました。
前述した通り、シェアサイクルの運用や自転車通行空間創出は進められているので、今後この意向がどの程度行動に移されていくのかも着目したいです。
ポスターセッション&交流会 企業展示
そしていよいよ、弊社が掲示者として参加したポスターセッション。
行政、民間企業、研究機関などの50団体が自転車に関する取り組みについてポスターを作成し、参加者と意見交換を行う場です。
ポスターセッション・交流会 発表テーマ
① 自転車まちづくり
② 走行環境
③ 安全・教育
④ サイクルツーリズム
⑤ 公共交通としての自転車
⑥その他
弊社の発表テーマは④サイクルツーリズムです。掲示ポスターはこちら
(他団体のポスターも、わかさいくるのページから確認できます。リンク)
同時開催の企業団体展示では、太陽誘電株式会社の回生電動アシストシステム「FEREMO™」を搭載した回生電動アシスト自転車や、株式会社椿本チエインの電動アシスト3輪自転車「LA SI QUE」なども出展されていました。
ポスターセッション&交流会、企業展示の枠は2時間で、会場では閉場ぎりぎりまで熱い意見交換が行われました。
このセッションを通じ、各自治体のナショナルサイクルルート関連の取り組み、民間企業の自転車活用サービス、教育機関のツーリズムに関する研究など、さまざまな活動を知ることができました。
多くの方々が自転車の価値を高めたり届ける活動をしていることが肌で感じられ、これから日本で自転車利用の魅力が再認識されていくと実感しました。
また、ポスターセッション会場では、地域産品である敦賀市のおぼろ昆布とわさび昆布、小浜市の焼き鯖寿司、美浜町のへしこの大根添えと美浜のトマト、高浜町の白ちくわとてっぴ入り米かま、おおい町の梅ゼリー、若狭町の梅どら焼が登場。参加者にふるまわれ、敦賀・若狭の食の魅力を楽しめるひとときにもなりました。
2日目のプログラム
2日目も自転車に関する理解を深めるプログラムが用意されており、分科会からスタートです。
分科会
5つのテーマに分かれて登壇者による発表や意見交換が行われました。テーマは下記で、自転車活用に取り組むNPO法人、大学教授、まちづくり関係者などが登壇されました。
分科会テーマ
① 自転車まちづくり
② 走行環境
③ 安全・教育
④ サイクルツーリズム
⑤ 公共交通としての自転車(レンタサイクル・シェアサイクル)
今回は①自転車まちづくりの会に参加しました。
自転車活用が浸透している海外事例が取り上げられ、日本での自転車活用のヒントを探ったり、海外と日本の標識を比較して課題を見つけたりと、学びになる内容がたくさんありました。
全体会議(総括)
その後の全体会議では、分科会の総括、ポスター表彰、開催報告、次回開催地の紹介、閉会挨拶が行われました。
ポスター表彰で受賞されたのは下記の3つです。おめでとうございます!
MVP賞 鳥取県サイクルツーリズム振興室「鳥取うみなみサイクルトレイン 出発進行‼︎」
特別賞 ふくしま浜通りサイクルルート推進協議会「ふくしま浜通りサイクルルート推進協議会の取組について」
会長賞 サイクルトレイン応援ラボ「広がるサイクルトレインネットワーク」
次回は2025年10月31日と11月1日に名古屋市で開催予定であることも発表されました。1年後の開催も楽しみです。
エクスカーション
2日目最後のプログラムとして敦賀・若狭エリアをサイクリングするエクスカーションが企画されていましたが、天気の都合で中止となりました。(希望者は若狭湾サイクリングルートの一部をバスで見学されたようです。)
もし実施されていれば、若狭湾国定公園を代表する景勝地の「三方五湖」やアジアで初の国際環境認証「BLUE FLAG」を取得したビーチ「若狭和田ビーチ」の近くをサイクリングしながら、自然、歴史、伝統を実際に体験できる機会になっていました。ぜひまた再挑戦しに来たいです。
最後に
「第11回 自転車利用環境向上会議 in 敦賀・若狭」はHaNeRiとして記念すべき、初めての展示参加の場となりました。
全国から自転車に携わる人々が集まり、それぞれの自転車活用の課題や取り組みに関して、さまざまな視点からディスカッションできる貴重な機会でした。
一過性の楽しんで終わるイベントではなく、参加者が今後も中長期的に自転車活用について考えていく内容だったことが印象的です。また今回の内容を踏まえて皆様とディスカッションや交流をしていければと思います!