vol.6 (後編)津和野町Yu-na「帰ってきたくなる感幸地(かんこうち)を目指す」

ファンミーティング

vol.6 (前編)津和野町Yu-na「守られてきた魅力を体験できるストーリーツアーを」から続く)

目次

津和野体験Yu-na

HaNeRi:サイクリングツアーは「津和野体験Yu-na」として実施されているのですよね。Yu-naについて教えていただけますか。

岡野:ただツアーを作るだけだと観光客は来てくれないので、「過ごし方の提案をしたい」と考えて生まれたツアーブラントです。

津和野には「ゆっくりしていってね」という意味の「ゆうにしんさい」という方言があるのですが、津和野でゆっくり楽しんでほしいというコンセプトで名づけました。

HaNeRi:開催されているツアーをサイトでも拝見しましたが、どれも贅沢なひと時を味わえて、エネルギーチャージできる内容ですね。津和野の魅力を堪能してほしいという思いが伝わります。

岡野:最近はファンミーティングを開いて、お客様の声をじっくり聞く機会も作っています。こういう場が、また第二のふるさとである津和野に帰ろうと思ってもらえるきっかけになるといいなと思っています。

津和野は自転車伝説の地

Ebike乗車中

HaNeRi:サイクリングツアーではE-BIKEを利用されているとのことですが、津和野と自転車は相性がよいのですか。

石飛:1970年代に「ディスカバー・ジャパン」が謳われて旅行ブームだった際、津和野はとても有名な観光地だったんです。いまの竹下通りのように、若者が詰めかける場所でした。

当時は津和野でデートをするのが若者のトレンドになっていて、タンデム自転車で二人乗りをしたり、レンタサイクルを借りて町を散策するのが流行っていました。

そういった背景もあり、自転車はもともと津和野でよく利用されている手段だったんです。最近は電動自転車が出てきたので、シェアサイクルやツアーで自分たちも取り入れています。

もし津和野の自転車年表なんてものがあれば、古くから自転車が活用されてきた歴史が見えてくると思います。

HaNeRi:当時流行っていた自転車や文化が見えてきて面白そうですね。

石飛:津和野は「自転車の伝説の地」と言ってもいいくらいで、だから自転車を使うツアーにしたという背景もあるんです。

HaNeRi:なるほど!

津和野観光のE-BIKE活用

津和野でのYu-na活動の様子
Yu-naサイクリングツアーの様子

HaNeRi:サイクリングツアーで使う自転車をE-BIKEにした理由は何ですか。

岡野:津和野はコンパクトな場所なのでシティサイクルでも観光を楽しんでいただけるのですが、ツアーでは地元の人も行かない穴場スポットもまわるので、しっかり動けるE-BIKEを活用しています。

石飛:漕ぐことに疲れてしまうと、落ち着いて景色を見たり、ガイドの説明を聞く余裕がなくなってしまうので、観光を楽しむという意味で重要な移動手段ですね。

HaNeRi:E-BIKE利用における課題はありますか。

岡野:安全面に気を付けています。サイクリングツアーでは自転車のルールを順守していただくようにお願いしていて、左一列で整列して進みます。声が届きにくくなる分、ジェスチャーを使ったり、後ろの方への伝言をお願いしながらやっています。

地元の方からの理解は欠かせないので、迷惑をかけないようにと意識していています。

ツアー中に地元の方とすれ違う際には必ず挨拶するようにしているのですが、都会からいらっしゃる方にとっては、たまたま出会った方と気軽に挨拶したりお話したりすること自体が珍しく、貴重な体験になっているようです。

HaNeRi:近年は観光客受け入れの課題を抱えている場所もありますが、津和野ではいい関係を築けるようなケアもされているのですね。

石飛:E-BIKEは高いので、ある程度の台数を揃えようと思うと予算繰りは大変ですが、いいものは長く使えますし、現状は障壁は感じていません。他の観光地でも導入が進めばいいなと思います。

ツアーガイドの現状と課題

ツアーガイド中の岡野さん
ツアーガイド中の岡野さん

HaNeRi:ツアーガイドに関する課題はありますか。

岡野:津和野では、Yu-naと、観光協会が運営する「ガイドくらぶ」がツアーガイドを提供しています。(2024年6月現在)

自身も過去にガイドくらぶとしてガイドを手伝ったことがありますが、こちらのガイドは定年退職されたシニアの方が多く、団体ツアーに加えて、個人旅行のお客様の要望に合わせた案内もおこないます。

一方、Yu-naではビジョンに共感してくれた20~30歳代がツアーガイドをしています。ただ皆さん他に本業があるので、必ずしもすべてのツアースケジュールに合わせられるわけではありません。自分がいなくなるとお客様の希望スケジュールに合わせて柔軟にガイドできる人がいなくなってしまう状況です。

そのため、属人化させないようなYu-naの組織整備を進めています。

HaNeRi:ツアーガイドの育成はおこなっていますか。

石飛:ツアーガイド候補者にはまずツアーに参加してもらい、想いを持ってツアーガイドをしたいと考える方にのみお願いしています。いまはスマホなどで簡単に情報が手に入るので、ただ決まった説明をするだけではガイドの価値はは出せません。本当に津和野が好きな人だからこそ伝えられるガイドをしてもらいたいと考えています。

そのうえで、最低限これは伝えてほしいというスクリプトは用意しています。伝えるストーリーに応じて声の抑揚を変えたり、相手に応じた情報の出し分けもおこないます。

お子さんにはお子さんに分かりやすい表現で、知的好奇心がとても強い方にはそれに対応する情報をお伝えするなどですね。経験を積みながら各ガイドで個人のエッセンスは入れていただきますが、フローはきちんと作っています。

ガイドは相手に合わせた接客であり演劇だと思っていて、それを実演するための台本は準備しています。あとは、それを担ってくれる人とどう出会うかが課題です。できるだけ多くの方に津和野に来ていただいて、気に入っていただけたらガイドになってくれると嬉しいですね。

「感幸地(かんこうち)」を目指す

石飛さんと岡野さん
展示会で津和野について話す石飛さんと岡野さん

HaNeRi:今後の目標を教えてください。

岡野:津和野が、人が押し寄せる観光地ではなく、帰ってきたくなる「感幸地(かんこうち)」になることを目指しています。

また、自分たちが儲かるだけではなく、関わってくださる方が精神的に豊かになったり、地域の経済がまわったりと、周りの方がきちんと幸せになれるかという点も意識しています。

これからの数十年で津和野も人口減少し、観光客の受け入れができる数も限られてくると予想しています。ですが、一人一人と向き合って没入体験を提供してファンになっていただき、また来たいと思ってもらえる場所にしていきたいです。

石飛:自分もまずはファンづくりですね。津和野に帰ってきてくれる人をもっと増やしていきたいです。津和野は特別な癒しをくれるなど、本当に大好きな場所なので、魅力をしっかり伝え続けたいと思います。

あとは、まだ知名度が低いので、皆さんが癒しを求めるときの旅先候補に挙がるような場所にしていきたいです。

メッセージ

HaNeRi:最後に、記事を読んでくださる方にメッセージをお願いします。

岡野:津和野の魅力を知っていただく手段としてサイクリングツアーを実施していますが、このツアー体験をしていなければ自分が津和野に移住することはなかったと思います。

自分が心を動かされたサイクリングツアーのように、津和野の魅力を知っていただく機会をこれからも作っていこうと思っているので、ぜひ津和野に遊びに来てください!

石飛:サイクリングツアーを実施して、地域の魅力を訴求している自治体は他にもあると思います。ただ、それぞれの良さをお互いにすり合わせる機会は少ないと思うので、これからは今回の「自転車」のような共通言語で繋がりながら、お互いの魅力を「知り合う」機会も作っていけたらと思います。

あとははやり、とにかく津和野に遊びに来てほしいです!

貴重なお話をありがとうございました!
インタビュー時やエピソードからも津和野が大好きなことが伝わってくる石飛さんと岡野さん。
そんなおふたりの想いが詰まったストーリーツアーは、津和野でのぜいたくな時間を過ごしたい方にぴったりです。
知れば行きたくなる、行くとまた帰ってきたくなる津和野をぜひ体験してみてください!

★石飛さん、岡野さん、Yu-naさんの取り組みについて気になった方へ

津和野の魅力をストーリーと共に五感で体験できるツアーブランド「津和野体験Yu-na」

地元の人々が大切にしてきた「珠玉のストーリー」を電動自転車で巡る交流型ツアー「sokoiko!」
(広島、東京、明日香村のサイクリングツアー(2024年6月時点))

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