今回のインタビューでは、一回の充電で1000km走れる回生電動アシスト自転車「Re:BIKE(リバイク)」の開発に携わられた株式会社丸石サイクルの竹林宏樹さんと鈴木仁さんにお話を伺いました。
株式会社丸石サイクル 執行役員 商品部 部長 竹林宏樹さん
1996年に新卒で丸石サイクルに入社。営業や宣伝などの経験を経て、2024年7月現在は商品部の責任者を務める。
株式会社丸石サイクル 商品部 鈴木仁さん
飲食業界を経験後、東京サイクルデザイン専門学校で自転車制作に携わり、2023年より丸石サイクルに入社。即戦力として次世代自転車の商品企画に従事。
挑戦を続ける「MARUISHI」ブランド
HaNeRi:本日はよろしくお願いいたします。早速ですが丸石サイクルさんについて教えていただけますでしょうか。
竹林:「MARUISHI」ブランドは2024年で創業130年になります。明治時代に日本に自転車文化が入ってきたタイミングでアメリカから自転車を輸入したことから始まり、その後震災や災害を乗り越えながら現在に至った、歴史のある自転車メーカーです。
扱っている自転車は、電動アシスト自転車、シティサイクル、スポーツモデル、子ども向けなど幅広く、価格帯も高級路線からお手軽なものまで揃えています。
また、シャフトドライブ(ベベルギヤとドライブシャフトによりロス無く回転を伝える機構)を採用した自転車や、ペットと一緒に乗れる電動アシスト自転車なども展開し、常に新しい挑戦を行っています。
次世代回生電動アシスト自転車「Re:BIKE」
HaNeRi:2024年6月から次世代回生電動アシスト自転車「Re:BIKE」を販売されました。Re:BIKEについて教えてください。
竹林:Re:BIKEは、減速や停止するときの左ブレーキ操作時や、坂を下るときにフロントモーターが発電してバッテリー充電ができる回生電動アシスト自転車です。太陽誘電さんの回生電動アシストシステム「FEREMO」を搭載し、一回の充電で1000kmを走行できます(エコモードの場合)。
過去の販売経験を経てのFEREMO搭載
HaNeRi:FEREMO搭載はどのようなきっかけだったのですか。
竹林:電動アシスト自転車が世の中で一般的になり、丸石サイクルでも取り扱いに力を入れました。1990年の後半に当社でも回生充電ができるモデルを発売したこともありましたが、ほんの少し電力の足しになるかどうかという程度でした。
紹介がきっかけで太陽誘電さんのFEREMOが搭載された実験中の自転車に乗らせていただく機会があり、これなら発電量と坂道を上る際のアシストを高いレベルで両立できると実感して、自社の自転車に搭載させていただくことになりました。
スタイリッシュな移動手段
HaNeRi:そういった経緯で次世代自転車が登場したのですね。他にもRe:BIKEの特徴はありますか。
竹林:「1000km走行」というユニットの特徴を打ち出して耐久性も重視していますが、街中でかっこよく乗ってもらえるようにスタイリッシュなデザインにもこだわりました。Re:BIKEを使って、街中の坂道を機能的かつおしゃれに移動してもらいたいです。
他にも、めんどうな充電の手間が減らせる、発電と消費の電力量が表示される、車を使う場合と比べてCO₂排出を削減した量などが表示されるなど、おすすめできるポイントが複数あります。性別や年代にこだわらず、自分が「Re:BIKEのここがいいな」と思う特徴を楽しんでもらえればと思います。
実際にRe:BIKEに乗ったお客様の反応はどんな感じでしたか。
鈴木:発売直後なのでご購入いただいたお客様からのご意見やご要望はこれから確認していくのですが、展示イベントでRe:BIKEを見てくださった方は「1000km」というキーワードに興味を持たれたり、試乗して漕ぎだしの軽さやアシスト力をほめてくださっていました。
竹林:展示会での反応を見ていると、家電好きの方がまず興味を持ってくださっているようです。まずはその層に気に入ってもらって、そこから口コミなどで他の層に広がっていくと予想しています。
業界基準ルートで充電なし1000kmのテストを実施
HaNeRi:Re:BIKEが一回の充電で1000kmを走行できると証明するために実際にテストをされたのですよね。
鈴木:2024年の2月末から4月中旬の11日間、霞ヶ浦周辺とつくばりんりんロード、筑波山のふもとのアップダウンのあるコースを組み合わせたルートを走りました。(その時の様子はこちら)
自転車メーカーが燃費測定をする際には業界基準があり、その標準パターンでは平坦1km、勾配4度の上り坂1km、平坦1km、勾配4度の下り坂1kmの合計4kmの道のりを所定の速度で走行します。今回はその標準パターンと同様の条件になるように走行コースを考え、下り坂で発電できる機会も作りました。
HaNeRi:走った感想はいかがですか。
鈴木:電動アシスト自転車とはいえエコモードでの長距離走行。短期間、少人数での仕事の合間を縫ってのチャレンジであったこともあり、簡単に試験を終わらせることが出来たとは言えません。正直大変でした。ですが無事実証することが出来た今、「1000km走れる自転車です」と胸を張って言えるのでその甲斐があったなと感じています。
竹林:実際に走行できることを証明したことで、お客様から「本当に1000km走れるの?」と聞かれたときに、数値上の話だけではなく体験を踏まえてお答えすることができます。Re:BIKEは他にパワーモード100kmでも走行試験をして、走れることを確認しています。
HaNeRi:それぞれきちんと実証されているからこそ、自信を持って性能をアピールできるのですね。
自転車の製造販売をされている自転車メーカーさんの視点で自転車活用やサイクルツーリズムへの所感やお考えはありますか。
竹林:今回つくば霞ヶ浦りんりんロードを走ってみて、道路が整備されていると感じました。その意味では、自転車を使った観光がしやすくなってきていると感じています。あとは、レジャー以外の普段の移動手段としても、改めて自転車を取り入れてほしいなと思いました。
車で移動するときよりも適度に体を動かせる、環境にやさしく移動できるなど、移動手段として以外のメリットも伝えられれば、回生電動アシスト自転車に興味を持ってくれる方が増えてくると思います。
回生電動アシスト機能で新たな価値提供
HaNeRi:今後の目標はありますか。
竹林:Re:BIKEは「一回の充電で1000km」という点で他の電動アシスト自転車と差別化はできますが、そのユニットの特性をどうやってお客様の価値として生かしていただけるかは引き続き考えなければなりません。
今回、ファーストモデルとしてRe:BIKEを発売できましたが、子ども乗せ自転車やペットを乗せる自転車などにも回生充電機能を付けて価値を提供できればと思いますし、シェアバイクや業務用としても回生電動アシスト機能付きの自転車が広がっていけばと思います。
充電切れの心配がほとんどないことや、いざ充電が必要なタイミングになっても搭載しているバッテリーの容量が少ないため充電時間も短くて済む特徴があります。レンタサイクルやシェアバイクを運営される方にも喜んでもらえると考えています。
現在、パートナー企業とアイデアを出し合って、新たに回生充電機能を使ってできることを考えています。これまでにないような、移動手段だけでない価値を世の中に提供していくのが目標です。
鈴木:丸石サイクルは40~50歳代には認知されているのですが、20~30歳代にはあまり知られていません。シェアサイクルなどをきっかけに、MARUISHIブランドをアピールして、「回生電動アシスト自転車と言えば丸石サイクル」というくらい普及させたいです!
貴重なお話をありがとうございました!
新卒で丸石サイクルに入社し数々の挑戦を続けてきた竹林さんと、自転車制作の専門学校を卒業後に即戦力として活躍する鈴木さん。
おふたりが商品開発に携わる自転車は、老舗ブランドの安全性や技術力に加えて、夢やワクワクが詰まっていると感じました。
シェアサイクルなどでRe:BIKEが身近に利用できる日が楽しみです!