(vol.2(前編)前橋観光コンベンション協会「赤城山の坂の多さを『E-BIKEを楽しめるルート』の強みに」から続く)
インバウンドの取り組み
HaNeRi:外国人旅行者向けの取り組みもされているのでしょうか。
藤田:観光庁がインバウンド強化の補助金を出していたりと、国策でもあるので赤城エリアでも外国人旅行者の誘致はしていきたいと考えています。
まだ件数は少ないですが、都内ではできない体験を求める人が「サイクリング」というキーワードで赤城エリアを見つけて訪れてくれるケースがあります。日本に複数日滞在する旅行者が、首都圏の観光に満足した頃に赤城でのサイクルツーリズム体験をしにきてくれる流れを増やすのもいいと思います。
鈴木:前橋市内や周辺エリアには温泉もありますし、ぜひ首都圏とは違う活動を楽しんでもらえればと思います。サイクルツーリズムで有名なしまなみ海道は周りが海だったり比較的道が平坦なのが特徴ですが、赤城山エリアは町も近くて起伏があるのでまた違った経験ができます。毎年秋に実施している赤城山1周ライドイベントも、少しずつリピーターが増えてきました。
寺田:赤城山1周ライドイベントの参加者は、県内の方はもちろん半数以上が県外から参加しに来てくださっています。2023年のイベントでは、約100kmを1日で走破するのはきついという方向けに約30kmのショートコースも用意しました。今年はスタンプラリーをアプリで実施していますが、こういった企画も絡めながら、初心者やライト層にもお楽しみいただけるようにしていきたいです。
誘致ターゲット
HaNeRi:今後特に誘致したいターゲットはどういった方でしょうか。
鈴木:やはりインバウンドは意識しています。例えばヨーロッパでは長期休暇を取得する習慣があるので、そういった方向けにロングライドを楽しんでいただくための戦略を練ったりしています。
藤田:あと、自国だと山がないためヒルクライムができないという外国人のお客様も過去にいらっしゃいました。国や慣習に応じてどういったご提案をするのがよいか日々考えています。
鈴木:サイトで英語版のページを作ったり、あとは海外予約サイトに英語で赤城の情報を掲載したりと、海外のお客様にも赤城の情報にアクセスしていただきやすくなるような取り組みをしています。
HaNeRi:外国人旅行者へのフォローはどのようにされていますか。
藤田:外国人旅行者にコーディネーターやツアーガイドが付くパターンと、旅行者自身で予約して旅行するパターンがあります。前者の場合、ガイドツアーは労力がかかるのでガイドを増やそうと育成事業を試みたのですが、うまく集まっていないのが実情です。
ベテランガイドであってもそれだけで生計を立てるのは難しく、常にガイドの仕事で予定を埋めることは厳しいため、複数の仕事をされている方が多いですね。
当協会としても「まずは気軽に自転車観光を楽しんでもらいたい」という考えがあるので、対応可能な時は協会職員がガイドとしてご案内することもあります。
道の駅レンタサイクルの課題
HaNeRi:道の駅まえばし赤城のレンタサイクルについて、課題に感じていらっしゃることはありますか。
藤田:利用者が多い駅でレンタサイクルをするのとは違い、道の駅へは車でいらっしゃる方がほとんどなので、そこから移動手段を自転車に変えてもらうというのはひとつ大きなハードルです。
鈴木:ですので、そういった道の駅に車でいらっしゃった方向けに、車を置いて短時間で道の駅周辺をまわれるサイクリングコースの提案もしています。
スタンプラリーアプリ「AKAGIサイクルスタンプラリー」に掲載している『道の駅まえばし赤城』周辺エリアのコースはスタート地点とゴール地点を道の駅まえばし赤城に設定しています。気軽にレンタサイクルをお試しいただければと思います。気軽にレンタサイクルをお試しいただければと思います。
藤田:大型娯楽施設に併設している道の駅ではないので、何万人も集客するのは大変です。ガイドツアーを企画することもありますが、参加費用がかかります。国内の方がわざわざ参加費を払ってまわってくださるケースは少ないです。
そこで、レンタサイクルを使ってご自身でエリアをまわっていただければ、史跡や絶景などを見ながら、あまりお金をかけずに観光していただけます。そこにゲーム性を提供できればより楽しんでもらえると思うので、そういった観光客向けの施策にも今後注力していければと思います。
進行中の実証実験
HaNeRi:現在、いくつかの実証実験をご一緒させていただいています。現時点での感想はございますか。
藤田:道の駅まえばし赤城では回生電動アシスト自転車を使用したIoT実証実験を実施していますが、例えばこの季節はこのスポットに人が集まっているなという情報が取れたりすると、地元の人も知らない新しい観光スポットを発掘できる可能性があります。
寺田:普段は車で移動している地元ので方も移動手段を変えると新たな発見をされることも多く、昨年自分が担当したウォーキングイベントでは「50年以上住んでいたけれど、この場所は初めて歩いたよ」といった感想をくださる方もいました。
藤田:赤城エリアはそういった掘り起こせる魅力がたくさん詰まっている場所だと思うので、実証実験のデータも活用しながら、サイクリストの嗜好や体力などに応じた新しい楽しみ方ができるルート提案ができればと思います。
サイクルツーリズム推進における課題
HaNeRi:サイクルツーリズムを進めるにあたっての課題はありますか。
鈴木:ナショナルサイクルルートの指定を受けようとする中で、道の整備は課題です。例えば、自転車専用道路のブルーレーンを設置するには行政の協力が不可欠です。
藤田:協会は行政からの複数の案件を受託するので、並行して案件を進める中で、担当者がサイクルツーリズムのみに特化しきれない実情もあります。例えば鈴木は花火大会とサイクルツーリズムの業務を兼務しています。
コンテンツを押し出して受け入れ体制を整えればより多くの観光客を誘致できると思うので、サイクルツーリズム専任担当者のような人員が増やせれば理想です。
HaNeRi:観光誘致施策などをご一緒させていただく弊社のような企業は、ただ単に協会さんにサービスや情報を提供してあとはお任せするスタンスではなく、一緒に考えて施策を進めていくことが必要ですね。
藤田:IT技術を活用することで、これまで人手をかけていた部分を代替できればうれしいです。これまで日本人向けにもガイド付きのコースを企画していたこともありますが、人手がかかるとガイド費用もかかるため参加費が上がってしまい、コンテンツを用意しても実際には催行されないこともありました。
今後はガイドがいなくてもお客様ご自身で観光をお楽しみいただける環境や仕組みを整備して、レンタサイクルをお貸し出しすれば、あとは自由に満喫していただけるようにできればと思います。
スポットで使える特典と絡めてセルフサイクリングを進めている自治体もありますが、赤城エリアだと娯楽施設や飲食店があまりないので、無料でお楽しみいただける公園などをスポットとして紹介することも多いんです。
そうすると、観光客にとってはレンタサイクル以外のコストを抑えて観光ができますが、前橋市としては施策がどこまで地域経済に貢献できたかを数値化することが難しいです。
鈴木:お土産を買ったり、飲食店利用をしてくださったりとお金を使ってくださる場面はもちろんありますが、これまではアンケートの回答から傾向をつかむくらいしかできていなかったので。そういった可視化も強化したいです。
あとは、サイクリストのおもてなしスポットとして「AKAGI Cycle Oasis <あかぎサイクルオアシス>」を設置していますが、実際の利用状況の分析もしていきたいです。
寺田:今後の課題ですが、スポットになってくださる店舗様はスポットになったことによる効果を気にされますので、数値データなどで報告できればと考えています。しっかりと実績を可視化できれば、スタンプラリーのスポットになってくれる協力店舗様も増え、観光施策を盛り上げていけると思います。集客効果を示せれば、広告出稿などの提案にも繋げられます。
現在実施している実証実験では、単なる貸し出し台数のデータだけではなく、レンタサイクル利用者がいつどこにいたかという情報を取得できるので、施策に生かしていきたいです。
最後に
HaNeRi:イー・フォースは主にデジタル軸でご支援できればと思います。最後にメッセージをお願いします。
寺田:実証実験中の施策のなかで、特に写真投稿システムが面白いと思います。当協会側でおすすめしている観光スポットはありますが、まだまだ我々が気づいていない魅力的な場所もあると思っています。サイクリストに新たに見つけていただく新しいスポットとうまく組み合わせて、観光提案の際に相乗効果を出せればと思います。
道の駅の利用者数に比べてレンタサイクルの利用者数は少なく、そちらもまだまだ成長する可能性を秘めていると感じています。当協会はデータ活用の専門家ではないので、活用に向けたアドバイスもいただきながら、新しい景色や場所を一緒に見つけて、前橋の発展に繋げていきたいです。
鈴木:まだこれからサイクルツーリズムのサービスをブラッシュアップしていく段階です。各方面からいろんなご意見を募集して、サービスに反映していきたいと思います。すぐにご参加いただけるAKAGIサイクルスタンプラリーもありますので(2023年11月時点)、ぜひ赤城エリアに遊びにいらしてください!
貴重なお話をありがとうございました!
「道の駅まえばし赤城」で実施中の回生電動アシストIoT実証実験、AKAGIサイクルスタンプラリーのデジタル化など、新たな観光に向けた取り組みをされている前橋観光コンベンション協会さん。
サイクリストへの更なる価値提供に繋げるべく、イー・フォースも一緒にデータ活用の可能性などを探っていければと思います!