2016年に、国や地方公共団体が保有する官民データについて、国民がインターネット等を通じて容易に利用できるよう措置を講じるように義務付ける「官民データ活用推進基本法」が制定されました。
その後、国や自治体を中心に民間企業も含めてオープンデータ化を進め、さまざまな統計データが無償で公開されるようになりました。
オープンデータは、観光・医療・教育・防災など、さまざまな分野において課題解決や産業創出のための活用が期待されています。
本記事では、オープンデータとは何かや、サイクルツーリズム促進のためのオープンデータ活用例を紹介します。
オープンデータの定義
オープンデータは、ルールを守れば誰でも無償で利用できます。デジタル庁では下記のようにオープンデータを定義しています。
オープンデータとは、国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、以下のいずれにも該当する形で公開されたデータを指します。
① 営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの
引用:デジタル庁「オープンデータをはじめよう ~ 地方公共団体のための最初の手引書 ~」
② 機械判読に適したもの
③ 無償で利用できるもの
5段階のレベル
オープンデータは、その公開レベルによって5段階で分けられています。
段階 | 公開の状態と特徴 | データ形式 | |
★ | オープンライセンスでデータを公開 人が閲覧ができ、他人と共有しやすい。簡単に公開できる。 ※文書からデータを取り出すのは難しい。 | 編集不可 | PDF、JPG |
★★ | コンピュータで処理可能なデータを公開 一部のソフトウェアを利用し、データの集約、計算、可視化などの直接処理ができる。 | 編集可能 | XLS、DOC |
★★★ | オープンに利用できるフォーマットでデータを公開 特定のソフトウェアの機能に限定されることなく、好きな方法でデータを操作できる。 データはWeb上に置いてあり、Webの中にあるデータではない。 ※データを書き出すためには,コンバーターやプラグインが必要になる可能性がある。 | 編集可能 | XML、CSV |
★★★★ | Web標準(RDF等)のフォーマットでデータを公開 公開者が使用しているパターンの一部を理解すれば、既存のツールやライブラリを再利用できる可能性がある。 他のデータと安全に組み合わせることができる。 他のデータ公開者「から」データへのリンクがある。 ※データのRDFグラフ構造を理解するためには、表データ (Excel/CSV) や木構造データ (XML/JSON) よりも労力がかかる。 | 機械判別可能 | RDF |
★★★★★ | 他へのリンクを入れたデータ(LOD)を公開 外部データ「へ」のリンクがある データ消費時により多くの関連データを発見できる。 ※他のデータ公開者「へ」データをリンクさせるため、労力がかかる。 | 機械判別可能 | Linked-RDF |
オープンデータ化のメリット
国を挙げてのオープンデータ化を推進していますが、どんなメリットがあるのでしょうか。
メリット1:民間サービスの向上
オープンデータ化された情報を民間企業が自社で取得・保有する情報と組み合わせてサービスに活用することで、一般ユーザーが必要とする価値の高い形で情報提供をすることができます。
例えば、「WheeLog!」という、みんなでつくる車いすユーザー向けバリアフリーマップアプリがあります。
自治体が持つオープンデータのバリアフリー情報(車椅子使用者対応トイレの情報など)やユーザーから投稿される走行ログやスポットのバリアフリー情報を集め、車いすでも安心して行きたい場所に行ける情報インフラとしてサービスを展開しています。
この事例は、オープンデータをベースとして、さまざまなデータを組み合わせて相乗効果を生んだ好事例といえます。
メリット2:行政の業務効率化や透明性の向上
オープンデータ化にあたり、これまでデジタル化が進んでいなかった自治体を中心に、データの電子化や一元管理を行うことで業務効率の向上が期待できます。
例えば、千葉市の「ちばレポ」では、千葉市内で起きているさまざまな課題(道路の決壊、公園の遊具の破損など)を、アプリなどのデジタル技術を活用して市民にレポートしてもらい、市民と市役所(行政)、市民と市民の間で共有できるようにしました。
これにより、従来は行政の担当者が電話やFAXで応対してExcelや紙で管理していた年間約13,000件ほどの情報が、データベースで一元管理できるようになりました。そして、レポート内容や対応状況はオープンデータとして公開されています。
担当部門への案件の振り分けやステータス管理がしやすくなり業務が効率化すると同時に、見える化が進むことで市民が自主的に街をきれいにする行動にも効果が出ています。
参考:千葉市「ちばレポ(ちば市民協働レポート)」
参考:千葉市「ちばレポに関するオープンデータを公開しています」
このように、オープンデータとして情報を公開することで、市民や他の自治体や民間企業といったさまざまな人たちと連携しながら地域課題の解決に向けた活動がしやすくなります。
他にも、政策立案にあたって行政がその根拠となるオープンデータを公開することで、国民は政策について分析や判断を行うことができます。それにより、行政の透明性を上げたり、国民からの関心を高めることができます。
自転車関連のオープンデータ
2022年6月より、株式会社ドコモ・バイクシェアとOpenStreet株式会社(ハローサイクリング)の自転車シェアリングのデータ(ポートの位置情報や、各ポートで利用可能な自転車の台数)がオープンデータ化されました。
また東京都では、一部の地区を対象に自転車推奨ルートを設定して、シェープファイルで提供しています。
参考:公共交通オープンデータ協議会「自転車シェアリングのオープンデータを公共交通オープンデータセンターより提供開始」
参考:東京都オープンデータカタログサイト「自転車走行空間について」
サイクルツーリズム促進においては、どのようなオープンデータ活用が考えられるでしょうか。例をご紹介します。
活用例1:複数の交通を繋ぐルート提案
電車やバスだけでは目的地までたどり着けない場所であったり、乗り換えの接続が悪いケースがあります。
シェアサイクルなどの交通手段に関するオープンデータを活用してさまざまな交通情報を繋げば、目的地までたどり着くルートを提案しやすくなります。
活用例2:自転車観光の利便性向上
自転車通行空間の整備状況とその付近の観光地情報を提供することで、自転車観光をより便利で快適にすることができます。
また、駐輪場の位置情報やシェアサイクルの貸し出し状況などが分かるようにしておき、気軽に自転車で観光してもらうための情報提供も有効です。
参考:一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会「自転車シェアリングのオープンデータ」
まとめ
本記事ではオープンデータのメリットや活用事例を紹介しました。
今後さらにオープンデータ化が進むことで、新たに利用できる情報や活用方法が増え、たくさんの魅力的なサービスが誕生すると予想できます。
成功事例なども参考にしながら、ぜひオープンデータの公開や活用を進めてみてください。