e-Cargo BIKE(eカーゴバイク)とは?特長や物流最適化、防災におけるメリットを紹介

e-Cargo BIKE(eカーゴバイク)とは?特長や物流最適化や防災におけるメリットを紹介

混雑した都市部を中心に、荷物を運ぶ機能に優れた「eカーゴバイク」が注目されています。

世界各国が2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すうえで、物流においてCO₂を排出しない配送手段への切り替えは重要です。

本記事では、eカーゴバイクのメリットや既に活用が進みはじめているヨーロッパでの動向、日本での展開予想を紹介します。

目次

eカーゴバイクについて

そもそもカーゴバイクとは何かや、世界的にeカーゴバイクが注目を集めはじめている背景について紹介します。

カーゴバイクとは

カーゴバイクは荷物を運ぶための運搬用自転車です。荷台がフロントにあるものや背後にあるもの、子どもと荷物をそれぞれ乗せられる(載せられる)ものなど、さまざまなタイプが存在します。

カーゴバイクに電動アシストが付いたものがeカーゴバイクや電動カーゴバイクと呼ばれます。少ない力でも重い荷物を楽に運ぶことができ、自動車を補完する乗り物としてヨーロッパやアジア太平洋地域などを中心に広がっています。

eカーゴバイクが活用される背景

カーボンニュートラル

世界経済フォーラム(World Economic Forum)によるレポートでは、2019年の数値と比較して2030年の配送業者の車両数、配送車両によるCO₂排出、配送業者の車両数が増えることによる平均通勤を下記のように予測し、ラストワンマイルの施策の重要性を述べています。

配送業者の車両数 530万台(2019年)→720万台(2030年) 36%増
CO₂排出量 1900万トン(2019年)→2500万トン(2030年) 600万トン増
平均通勤時間 53分(2019年)→64分(2030年) 21%増

別のMordor Intelligenceのレポートではeカーゴバイクの世界市場規模は2024年で20億1,000万ドル、2029年には29億2,000万ドルで、2024~2029年のCAGR(年平均成長率)は7.75%と予測されています。また、過去の2017年~2022年のCAGRは6.7%で、ドイツ、英国、フランス、米国などの先進国が市場の大きな割合を占めたとされています。

ヨーロッパでeカーゴバイクが活用される背景として、環境への意識の高さや国の制度が挙げられます。欧州連合(EU)は2050年までにカーボンニュートラルの達成を目指して欧州グリーンディールを締結し、そのファイナンス機関としてJust Transition Fundを設立しました。

環境と経済に優しい交通機関の導入を促進するために各国でも取り組みが進み、オランダ政府が2025年から化石燃料を使用する配送車両を禁止する計画を発表したり、フランスが国家投資計画「フランス2030」で低炭素型モビリティの開発を目標として掲げています。

日本でも「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に電動車の推進が記載されており、経済産業省の関連ページでは、カーボンニュートラルの目標実現を目指す企業の挑戦を後押しするために、あらゆる政策を総動員すると述べられています。

eカーゴバイクは政府が推進する取り組みとして補助金の対象になるケースもあり、中小企業や個人でも比較的取り入れやすい手段として広まってきたといえそうです。

参考:World Economic Forum「The Future of the Last-Mile Ecosystem」
参考:Mordor Intelligence「E-cargo Bike Market SIZE & SHARE ANALYSIS – GROWTH TRENDS & FORECASTS UP TO 2029」
参考:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

eカーゴバイクを使うメリット

配達

eカーゴバイクは環境、経済、防災などの幅広い面で価値提供できる配送手段です。この章ではeカーゴバイクのメリットを紹介します。

環境に優しい

eカーゴバイクはCO₂排出を排出しないため、ゼロエミッションの輸送手段として活用できます。

また、プロキング(ごみ拾い(PlockaUpp)とジョギング(Jogging)を組み合わせたスウェーデン発祥の活動)とも相性がよく、ごみ箱を載せたカーゴバイクでごみを集めながらランナーと一緒に走行するイベントも開催されています。

物流の改善

お客様にサービスを届ける際の最後の区間である「ラストワンマイル」でeカーゴバイクを活用することで、配送を効率化し、顧客満足度を向上させることが可能です。

なお、物流にはさまざまな面で課題があるため、宅配ロッカーや配達ルート設計機能などの他の施策と合わせて取り組むとより効果的です。

雇用創出

日本を含め世界的にEC市場が伸びており、物流業界の人手不足が叫ばれていますが、カーゴバイクを活用することで人手不足の解消と雇用創出に繋げられる可能性があります。

「3rd European Cargo Bike Industry Survey」の調査結果によると、ヨーロッパの配送業者の87%がカーゴバイクを利用しており、17万人の雇用が創出されています。また、導入企業の大半が中小企業で、ローカルジョブの創出に繋がり、雇用者数は3倍に伸びています。

参考:cargobike.jetzt, Cycling Industries Europe (CIE), Crakow University of Technology, European Cycle Logistics Federation (ECLF)「3rd European Cargo Bike Industry Survey」

防災

災害などでインフラが機能しない場合に、必要な物資を運搬する手段としてeカーゴバイクは有効です。

また、地震で土砂崩れが起きてトラックなどが通れない場所でも小回りを利かせて土砂や瓦礫の撤去に役立てることができ、病人や怪我人の輸送手段としても機能します。

参考:有限会社クリオシティ「防災やサステナビリティな視点からのカーゴバイクの有用性について」

日本でのeカーゴバイク活用

電動カーゴバイク

2024年1月現在、まだ日本でのE-カーゴバイクの知名度が高いとは言えません。走行時のルールについては、自身でよく確認する必要があります。

一方で、2023年にはカーゴバイクの世界大会が日本で開催されるなど、今後日本でもカーゴバイクやeカーゴバイクが広がる可能性は高そうです。

eカーゴバイク利用時の注意点

潜在的な可能性を秘めるeカーゴバイクですが、走行の際は各都道府県の公安委員会による道路交通規則をよく確認して順守してください。

なお、2024年6月現在、東京都公安委員会規則では積載物の重量の制限は下記のように定められています。

積載装置を備える自転車にあつては30キログラムを、リヤカーをけん引する場合におけるそのけん引されるリヤカーについては120キログラムを、それぞれこえないこと。

警視庁「道路交通法・東京都公安委員会規則」

他にも、積載物の長さ、幅又は高さ、積載の方法、車両のけん引制限について記載されており、積載のスペックが高いeカーゴバイクであっても、規則の範囲内ではフル活用しきれない可能性があります。

交通ルールは時代の変化に応じて改定されるため、eカーゴバイクの活用について公聴会などで声を上げる動きも必要になってくるかもしれません。

参考:警視庁「道路交通法・東京都公安委員会規則」

カーゴバイクのデリバリーレース「CARGOBIKE RACE」

2023年9月には世界中のメッセンジャー達が集まるカーゴバイクの世界大会CMWCが14年ぶりに日本で開催され、その大会のなかでカーゴバイクを使用するデリバリーレース「CARGOBIKE RACE」も実施されました。

このレースでは、カーゴバイクもしくは荷物が運搬可能な自転車に乗ってチェックポイントを回り、指示通りに荷物をピックアップして届け先まで運び、運搬した荷物量とスピードを競います。(アシスト付き自転車はオープン参加扱いで表彰対象外)

カーゴバイクの積載量やスピードのスペックはもちろん、どのようにルートをまわるかや、効率よく荷物を積み込めるかなども重要なポイントです。

積み込む荷物は、水や食料、衣料、燃料など、災害時に必要と想定される物資です。災害時に人力で大きな荷物や物資を運搬するための予行練習にもなり、防災の役割も果たします。

参考:バイクロア「CMWC2023横浜カーゴバイクレース」
参考:CMWC「CYCLE MESSENGER WORLD CHAMPIONSHIPS 2023 YOKOHAMA」

まとめ

本記事では、eカーゴバイクを利用するメリットや、ヨーロッパでの動向、日本での展開について述べました。

今回紹介したヨーロッパや日本以外に限らず、世界的に活用の機会が増え、参考になる事例も増えてくると思われます。

ぜひ、引き続き注目してみてください。

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